去る2020年9月、かつて私が働いていた北海道庁の職員が官製談合で逮捕されましたが、またもや道職員が再逮捕されました
農業土木工事の入札をめぐる官製談合事件で逮捕・起訴された30代の道職員が、親族宅の舗装工事の費用を入札参加業者に負担させていたとして、道警は13日、加重収賄の疑いで再逮捕しました。
再逮捕されたのは道農政部の主任、山田修容疑者(36)です。
道警の調べによりますと、山田主任は3年前、道発注の農業土木工事の入札に参加した苫小牧市の「北海土建工業」に工事価格などの情報を事前に漏らした見返りに、親族宅の舗装工事の費用90万円余りを負担させたとして加重収賄の疑いが持たれています。
また、道警はこの会社の元社員、谷口修容疑者(55)を贈賄の疑いで再逮捕しました。
道警は2人の認否を明らかにしていません。
山田主任らは官製談合防止法違反などの罪ですでに起訴されていて、道警は癒着を深めたいきさつをさらに調べることにしています。
一連の官製談合事件では、山田主任のかつての上司だった46歳の元主査も入札参加業者に情報を漏らしたとして起訴され、有罪判決が確定しています。
贈賄の疑いで再逮捕された谷口容疑者が勤務していた苫小牧市の「北海土建工業」には13日午後6時ごろに捜査員5人が入り、およそ1時間半にわたって捜索を行いました。
また、道の農政部が入る本庁舎には13日午後6時半ごろから合わせて10人ほどの捜査員が捜索に入りました。
捜索は午後8時すぎに終わり、捜査員たちは押収資料を入れたとみられる段ボール箱を運び出していました。
【出典:2021年1月13日 NHK NEWS WEB】
今回再逮捕された山田修容疑者ですが、2020年11月に官製談合防止法違反の疑いで逮捕されています
北海道発注の土木工事をめぐる官製談合事件で、道警は4日、官製談合防止法違反などの容疑で、道農政部農地整備課主任の山田修容疑者(36)=札幌市東区北=を新たに逮捕した。
また、建設会社社員谷口修容疑者(55)=苫小牧市桜坂町=を公契約関係競売入札妨害容疑で、無職小田知明容疑者(65)=苫小牧市柏木町=を談合容疑で逮捕した。道警は3人の認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は、山田容疑者が胆振総合振興局(室蘭市)農村振興課に在籍中、2018年に同局が発注した農業土木工事の一般競争入札で、谷口容疑者に工事価格を漏らした疑い。小田容疑者は当時、谷口容疑者と同じ会社で働いていた。
道警は9月、16年に道が発注した農業土木工事で業者に入札情報を漏らしたとして、同局に勤務していた佐藤清志被告(46)=官製談合防止法違反罪で起訴=を逮捕した。道警によると、山田容疑者と佐藤被告は同局で、同時期に同じ課で勤務していたことがあったという。
【出典:2020年11月4日付け JIJI.COM】
2020年9月に逮捕、その後有罪判決を受けた佐藤清志被告の官製談合事件も世間を騒がせましたが、山田容疑者は佐藤被告と同僚関係にあったそうです

もう、やりたい放題で目も当てられないズブズブなことになっていたようで、本当に許しがたい事件です
今回、山田容疑者は「加重収賄」という罪の疑いで再逮捕されましたが、この「加重収賄」という言葉を初めて聞いたので、どのような犯罪なのかを調べてみました
もしご興味がありましたらぜひご覧ください
目次
「加重収賄罪」とは?
刑法第197条の3第1項で禁じられている犯罪で、公務員が受託収賄罪・事前収賄罪・第三者供賄財(だいさんしゃきょうわいざい)を犯し、さらに請託(せいたく)に応じて特定の職務行為を行ったり、行うべき職務をしなかったりする罪で、1年以上の有期懲役に処される。
ざっくり説明すると、賄賂を受け取った(または後で受け取る約束をした)公務員が、実際に賄賂をくれた人のために不正な職務行為をすることです
この罪が成立するするパターンは主に2つで
● 公務員が賄賂を受け取った後に不正行為をした
【例】
事務用品の発注を担当している公務員がA販売店から賄賂をもらい、意図的にA販売店へ物品の発注をした
● 公務員が不正行為を先に行い、後で賄賂をもらう約束や要求をした
【例】
工事の発注を担当している公務員が、あらかじめB工業から賄賂をもらうことを約束して工事発注を行い、あとで賄賂を受け取った
どちらのパターンでも「加重収賄」が成立します
山田容疑者のケースは?
今回の山田容疑者のケースは、報道内容をもとにすると次のようなイメージです

すでに起訴されている「官製談合防止法違反」と混同しそうになると思いますが、官製談合防止法違反は上記イメージの①の行為で、②と③が今回の「加重収賄」の部分です
今回の事件は①の不正行為を行い、それに関連して②と③が行われたのではないかとの疑いで再逮捕されたものです
山田容疑者はどうなるの?
北海道庁から山田容疑者への懲戒処分は裁判で判決が確定した後となりますが、有罪となった場合は「懲戒免職」になると考えられます
佐藤清志被告の記事でも解説しましたが、北海道庁では「北海道職員に係る懲戒処分の指針」というものを決めています
【北海道職員に係る懲戒処分の指針(抜粋)】


黒枠の部分が山田容疑者の容疑に該当すると思われる部分で、仮に今回の加重収賄の罪が確定した場合は(16)によって問答無用で「懲戒免職」となります
官製談合のみの場合でも(11)において「免職または停職」とされており、2020年12月に有罪判決を受けた佐藤清志被告は「懲戒免職」にされましたので、おそらく同じ処分になると思います
ちなみに、逮捕された時点で懲戒処分を受けるイメージがあるかもしれませんが、罪が成立するのは裁判で判決が確定した時点なので、逮捕時点では懲戒処分を受けることはありません

おわりに
今回は日常では聞き慣れない「加重収賄」について、山田容疑者のケースをもとに解説してきました
仮に山田容疑者の2つの罪が確定したとすると、もはや社会的信用を取り戻すことは不可能でしょう(逮捕された時点ですでにマズいですが…)
貴重な税金で私腹を肥やした結果、36歳にして仕事と社会的信用を失い、安定した人生から一転して地獄モードに突入するのは避けられません
お金に関する犯罪なので再就職も難しいでしょうし、個人で起業するにしても社会的信用がないので非常に厳しいと思います
ちなみに、北海道庁の職員は約64,000人(H31.4月時点 警察官などを含む)なので、どうしてもごく少数のゴミ職員が発生してしまいます
だからといってゴミ職員の存在が許されることはないですが、気の毒なのは今回の事件の対応にあたっている職員ですね…
私も職員の不祥事案件の担当をしたことがありますが、膨大な説明資料の作成や報道&クレーム対応などなどが本来の業務に積み重なるので、本当に地獄でした…
この事件は今後も注目していきたいと思います。
それではまた!