もぐすけです
ふと、以前に出席した結婚式でとてもレアな体験をしたのを思い出したので、今回はそのお話をご紹介します
目次
プロローグ
約10年前、当時はある田舎で地方公務員として働いており、職場にアルバイトで来ていた20代前半の女子がいました
ある日、その女子から結婚式の招待状をこっそり渡されたのですが、どうやら職場の全員を招待している様子はなく、気心の知れた数人を招待しているようでした
正直、その女子とはそんなに仲がよいと思っていませんでしたが、断るのも申し訳なかったので出席することにしました
ところが、他の人は全員用事があるとのことで断ってしまい、けっきょく職場から出席するのは私だけとなってしまいました
「マジか・・・カンペキなまでのアウェー戦だろ・・・」
と思いつつ今さら断るのもバツが悪いので、憂うつになりながらもあっという間に結婚式当日を迎えました
結婚式当日
そして迎えた結婚式当日
当日は
① 14:30~山の上の某教会で結婚式
② 終了後に街中のホテルで披露宴
というスケジュールとなっており、自宅から教会までは車で約150Kmのため、かなりの時間的な余裕をもって家を出ました
ところがいつも以上に車の流れがよく、13:00ころには教会に着いてしまいました
「ヤバい・・・さすがに早すぎたな・・・」
と思いましたが、すでに駐車場にはかなりの台数の車がとまっており、時間が早すぎるという雰囲気をまったく感じさせない光景でした
「時間をまちがえたかな??」
と、かなり焦りながらしおりを見返しましたが、開始は間違いなく14:30~となっています
「そっか、きっと親族の人たちの車だな。それにしても台数が多いなぁ…」
などと考えながら他で時間をつぶすのも面倒だったので、とりあえず教会の中でのんびり時間をつぶすことにしたのです
地獄への入り口
会場は街中から離れた山の上の高台にあるものの、立派なチャペルのほか、街を見下ろす大きなテラスやホールも完備されており、かなり大きな教会でした
しばらく立派な外観をボーっと眺めつつ、少し緊張しながら入口のドアをそっと開けてみました
すると中は小さなエントランスホールとなっており、式場のスタッフと思われる美人のお姉さんが立っていました
そして恐る恐る中に入ってくる私を見るとすぐに見つけ

と、エントランスから奥の部屋に通じるドアを開けて私を手招きしています
「あ、きっと待合室に案内してくれるんだな」
と 疑うこともなく招かれるとおりにドアの中へと入っていきました
招かれた先は・・・
ドアを入った先は奥の部屋へ通じる廊下となっていて、壁の全面がガラス張りで気持ちのよい日差しに包まれています
そしてしばらく歩いた先に、また大きなドアが待ち構えていました
「待合室にしてはずいぶん立派なドアだな・・・」
若干の違和感を抱きながらも、品のよいお姉さんが案内してくれたのだから間違いないだろうということで、目の前にきた立派なドアを開けてみました
するとそこに広がっていた光景は…
待合室のような無機質な部屋ではなく、正面がガラス張りで街の景色が一望できる大きなホールが広がっていました
そして中にいたのは親族だけではなく、明らかに新郎新婦の友人と思しき若者たちが飲み物を片手に談笑しています
そんな光景を入口であ然と見ている私に、またまた品のよいスタッフのお姉さんが近寄り、私にグラスワインを差します
「車で来たので・・・」ということでウーロン茶にしてもらいつつ、もちろん知り合いなんて誰もいない孤立無援のパーフェクトアウェーな戦いなので、とりあえず部屋の片隅で周囲の様子を観察してみることにしました
式の開始まで1時間半ほどあるというのに、部屋にはすでに50人以上の若者たちと親族と思しき老紳士たちが、まるで式が終わった後の余韻に浸るかのように談笑しています
そして正面の人だかりをよく見ると、なんと新郎新婦の姿が一瞬だけ見えました
えっ、待合部屋に新郎新婦までいるの!?
結婚式の出席経験が豊富な方ならこの段階でおかしいことに気がつくと思いますが、当時の私は親戚の結婚式に1回呼ばれただけだったので、それを見抜く目を持っていません
そんな違和感だらけの光景を疑うこともなく、次に私が考えたのが
「新婦さんにあいさつしなきゃ!」
しかし、総大将こと新郎新婦の周りを家臣団こと親族や友人たちが幾重にも取り囲んでおり、とても私が単騎で本陣突撃できるような陣容ではありませんでした
せめて遠目からでも見られないかと場所をいろいろ変えてみたが、姿はまったく見えません
そうして新婦にもあいさつできないまま、どんどん時は過ぎていくのでした・・・
緊急事態発生
そして体感で1時間(実際は20分くらい)ほど経過したころ
式場のスタッフが大きな声で

「バルーンリリース??結婚式の前なのに外で何をするというんだ??」
結婚式レベル1の私は、もちろん「バルーンリリース」などというオシャレなイベントについての知識は会得しておらず、気づけばスタッフに促されるまま外のテラスに出てしまっていました
と同時に、新郎新婦も友人たちと一緒に外に出てきましたが、強靭な囲みはほとんど解かれており、ようやくその姿があらわになりました
そこで私が見たものは…
「あれ??新婦がなんか違う・・・」
結婚式の新婦は、髪型や化粧に特別な処理を施し、普段と違って見えることがあるという知識は会得していましたが、そもそも顔の輪郭がまったく違います
「いくらなんでも、ハリウッドの特殊メイクでもない限り輪郭を変えることはできないはず」
ようやくすべてを察した瞬間、私はフリーズし、思考停止に陥ってしまいました…
バルーンリリース
数秒の思考停止の後、なんとか再起動した私の頭の中ではこのイメージが浮かんでいました

そう、当時はなぜか「ドラゴンクエスト3」にハマっていたため、瞬時にこの戦闘コマンドが頭に浮かび、どこからともなくゾーマ戦のBGMが流れてきました
どのコマンドを選択すべきかと必死に考えていましたが、ふと気がつくと手には黄色の大きな風船を持っています
この時点で「にげる」というコマンドを選択すると「てきにまわりこまれる」ことが確定してしまいました
「ぼうぎょ」できるHPもなく「どうぐ」も何も持っていない私は、もはや「たたかう」を選択することしか許されていません
そして腹をくくった私は、「それ~~!」というスタッフの合図とともに黄色の風船を誰よりも心を込めて青く澄んだ空へと送り出していました
脱出
どこの誰かもわからない新郎新婦のために放った風船は、無事に青空のかなたへと吸い込まれていきました
これでホッと一安心・・・ではありません
この最悪な状況から脱出しなくてはならないのです
しかし、あからさまに間違えたという空気を出して逃げるのも悔しいなと思っていると
スタッフが大きな声で

というアナウンスがありました
そしてぞろぞろと移動していく参列者たち
あえて私は子供のころに会得した「気配消去の術」を使いながらその流れに乗り、途中であたかもトイレに寄るかのように少しずつさりげなく列を離れ、なんとか脱出できたのです
終始おそらく誰にも怪しまれず、そして誰からも話しかけられることはありませんでしたが、唯一、ホールに入った瞬間からずっと怪しい目で私を見続けている老紳士がいたのは今でも記憶に残っています
エンディング
無事に修羅場を脱出してエントランスに戻ると、本来の結婚式に出席すると思しき人たちが待っていました
私は頭の中の補助動力も使い果たし、しばらくイスでぐったりしていたのを覚えています
そして、新婦には非常に申し訳ないですが、その後の記憶がまったく残っていません…
おそらくデジャブ―を感じながら本日2回目のバルーンリリースをしていたのでありましょう
おそらくパーフェクトアウェーの中、披露宴も社交辞令全開で戦っていたのでありましょう
唯一うっすらと覚えているのは、帰りのローソンでからあげクンを食べながら伊右衛門を飲み、ほっと一息ついている光景だけです
たぶん料理もほとんど食べられなかったと思います
最後に、私は式場のスタッフを全く恨んではいません
それどころか、1日に2組の結婚式に参列するという貴重な経験は、はぐれメタルを倒したとき以上の経験値を私にもたらしました
ですが、この経験は以降の結婚式では何も活かされることがありませんでした
あ、「バルーンリリース」というものだけは一生忘れません(笑)
くれぐれも私のように結婚式をまちがって、縁もゆかりもない人を心からお祝いすることにならないようお気をつけください