公務員の話

【公務員の話⑦】公務員の退職金はどのように計算するの?

もぐすけです

2020年5月22日に辞職した「黒川 前東京高検検事長の退職金」について、政府が国民をミスリードするかのような発表をしていました

今回は政府の発表内容を検証しながら、黒川さんの退職金を例に、公務員の退職金の計算方法などについて解説します

黒川さんの退職金は訓告処分で減額されたのか?

結論から言うと

「訓告処分による減額は1円もありません」

2020年5月26日(火)に行われた菅官房長官の記者会見で、次の発表がありました

黒川氏は訓告処分にされるような行為を行ったので、退職金については定年退職」ではなく「自己都合退職 ※」の扱いとなり、退職金が少なくなる

※ 自己都合退職:自分の意思により「辞職願(退職願)」を提出して退職すること

 

自己都合により退職した場合は、一般論として試算すると約800万円程度低くなる

 

安倍総理はこの点をとらえて「訓告処分に従って減額されている」と言及したのではないか

2020.5.26(火)菅官房長官 記者会見より

※ 発言内容をそのまま記載

毎日新聞:総理が昨日の会見で、黒川前東京高検検事長の退職金について、訓告処分に従って減額されていると言及されました。

実際には法務大臣の説明によると自己都合退職によって減額されたようなのですけど、これは発言は訂正されるべきではないでしょうか?

菅官房長官:退職金についてはプライバシーに関わるものであり、お答えを差し控えたいと思います。

そのうえで、黒川氏については訓告処分に付された行為を行ったため、定年退職ではなくて自己都合退職の扱いにより、退職手当の額は相当額少なくなるというふうに聞いています。

詳細は法務省に問い合わせていただきたいのでありますが、あくまで一般論として申し上げれば、東京高検検事長が、例えば勤続37年として試算すると、自己都合により退職した場合は、定年で退職したよりも約800万円程度低くなるというふうに聞いています。

総理はその点をとらえて減額されていると発言をされたのだというふうに思います。

毎日新聞:総理の言い方ですと、あたかも処分を行ったことによって退職金が低くなったように受け取れます。

そうではなくて、本当はどうであれ、建前上は黒川さんはご自身の意思で辞職を申し出たわけですし、そうするとあの発言というのはやはりちょっとミスリードだったのではないでしょうか?

菅官房長官:いま申し上げましたように、黒川氏については訓告処分に付された行為を行ったために、定年退職でなく自己都合退職の扱いになり、退職手当は少なくなった、まぁそういうことです。

朝日新聞:今の点に関連してなんですけれども、国家公務員退職手当法によると、減額対象にはならないと思うんですけれども、総理のおっしゃるような訓告処分に従って減額されたというわけではないということでいいんでしょうか?

菅官房長官:いま私 申しあげたとおりであります。

訓告処分に付された行為を行ったために、定年退職ではなく自己都合退職の扱いになって、退職手当の額はいま言われたように少なくなった、こういうことです。

菅官房長官の説明では

① 黒川氏に訓告処分

② 訓告処分なので「定年退職」ではなく「自己都合退職」の扱いになる

③ 「自己都合退職」の場合は「定年退職」に比べて退職金の額が減る

という内容ですが、実際の流れは

① 黒川氏に訓告処分

② 黒川氏自身が検事長を続けるのは困難と判断し、自ら辞職願(退職願)を内閣に提出

③ 内閣が辞職を承認

④ 任期途中での退職となるため「定年退職」ではなく「自己都合退職」となることから、退職金の計算方法が変わる

となるので、訓告処分をしたから「自己都合退職」扱いになるのではなく、あくまで「黒川氏が任期途中で辞職願(退職願)を内閣に出した」ことが原因です

つまり、もし黒川氏が今回の件を気にすることなく検事長の職務を定年まで続けていた場合は、退職金は1円も減額されなかったことになります

 

毎日新聞の記者の質問どおり、あたかも訓告処分を行ったことによって退職金が低くなったと受け取ることができる内容ですので、これは政府のミスリードであると考えられます

以前の記事でも解説しましたが、「訓告処分」は懲戒処分ではなく単なる軽い注意なので、退職金に影響を及ぼすことはありません

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退職金はどのように計算するのか?

次に「なぜ定年退職自己都合退職で退職金が変わるのか?」

について、黒川氏の退職金を例に解説していきます

 

計算方法が複雑ですが、次の計算方法で算出します

基本額(退職日時点の給与額 × 退職理由別・勤続年数別支給率)+調整額

「退職日時点の給与額」というのは、退職日時点の月の基本給のことです

「退職理由別・勤続年数別支給率」というのは、次の表に書いてある退職理由に応じた月数のことです


書いてあることが難しいので、黒川氏が該当すると思われる部分を赤枠で囲みました

定年退職の場合:47.709月

自己都合退職の場合:41.7663月

基本給にかける月数が、定年退職よりも自己都合退職のほうが約6か月分低いことがわかりますよね

仮に基本給が100万円だった場合、約600万円低くなることになります

 

そして「調整額」というのは「ボーナスポイント」のようなもので、肩書きに応じた給料のランクによって上がっていきます

 

国家公務員の場合は、次の表のとおりに課長や係長などのランクに応じて1級~10級まで法律で決められており、昇給の場合は表の下昇進した場合は右側金額がスライドしていきます(俸給表といいます)

この表は一般的な国家公務員の課長までの俸給表なので、黒川氏のような偉い人の給与額は別に定められています

黒川氏の月給は「検察官の俸給等に関する法律」というもので決められており、その金額はなんと

1,302,000円 です

年収ではないです!月給です!

そして、調整額はこの俸給表のランク(級)によって金額が異なります

書いてあることが難しいので読まなくてOKです

公務員の退職金には、こんなおいしいおまけが付いてくるということだけ知っておいてください

 

私の調べた限りでは、黒川氏の調整額は赤枠の部分になると思われるため、金額は

1,302,000×6/100=78,120円/月

となり、これが60ヵ月分もらえますので

78,120×60=4,687,200円

が「調整額」になると考えられます

 

以上を踏まえて、黒川氏が定年退職」した場合と自己都合退職」した場合を比較していきます

【定年退職の場合】

① 基本額

1,302,000×47.709 = 62,117,118円

② 調整額

78,120×60 = 4,687,200円

 合計

62,117,118+4,687,200 = 66,804,318円

【自己都合退職の場合】

① 基本額

1,302,000×41.7663 = 54,379,723円(端数切り上げ)

② 調整額

78,120×60 = 4,687,200円

 合計

54,379,723+4,687,200 = 59,066,923円

【定年退職】ー【自己都合退職】

66,804,318円 ー 59,066,923円 = 7,737,395円 の減

政府が発表している金額とほぼ一致しているので、この計算方法で合っていると思います

 

ご覧のように、黒川氏は訓告処分によって退職金が減額になったのではなく、単純に自分から辞めたので「定年退職」ではなくなり、「自己都合退職」の計算方法に変わっただけです

さいごに

冒頭の菅官房長官の記者会見のとおり、退職金の仕組みを知らない国民をミスリードするような言動は決して許せるものではありません(菅さんは嫌いじゃないので、正しいことを言ってほしかった・・・)

今後も今回のような政府のミスリードを見つけた際は、正しい情報をお伝えしていきたいと思います

それではまた!

ABOUT ME
もぐすけ
元地方公務員&投資診断士の脱サラ中年 「もぐすけ」です。 誰もが思いそうな素朴な疑問 (略して「そぼぎ」) について情報発信しています。

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