今回の記事は次のツイートを引用させていただきます
密告社会のようになってきた。 pic.twitter.com/S245qCyBYM
— タナカヨースケ 今代司酒造 代表取締役社長 (@sakeman_tanaka) July 9, 2021
令和3年7月8日に「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室」と「国税庁酒税課」の連名で「酒類業中央団体連絡協議会各組合」あてに以下の文書が送付されました


一言で表すと「酒類の提供停止の要請に従わない飲食店に対しては取引を停止してください」という非常に衝撃的な内容です
いきなりこの文書を送りつけられて非常に困っている関係者の方がたくさんいらっしゃると思います
そこで「一体どう対応すればよいか?」というギモンについて、17年間の地方公務員の経験をもとに解説していきます
【2021.7.14 追記】
2021年7月13日夜、政府が依頼を撤回すると発表しました
目次
国からの依頼に従わなければならないのか?
結論は「無視」していただいてかまいません
腹が立ったと思いますのでビリビリに破り捨てていただいても全然問題ない文書です
重要文書っぽい書き方をしていますし、発出者に「国税庁」とも書いてあるので無視できないような感じもしますが、文書の重みとしては「街中で配られているチラシ」と大して変わりません
その理由をご説明します
理由① 「事務連絡」だから
報道では「通達」といわれていますが間違いです
【通達とは?】
行政上の「通達」の意味は、判例では「上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するもの」と定義されています。
基本的に「通達」は行政機関内で行われる連絡手段であり、民間団体へは行政手続法第2条第6号に基づく「行政指導」でもない限り使われることはありませんし、「事務連絡」で通達することもありえません
また、公文書における「事務連絡」というのは、「文書管理簿」などの記録に残らない軽易な内部連絡などに使われる手段なので、国から民間団体に「事務連絡」で何かを依頼するということはあり得ませんし、大変な失礼にあたります
仮に民間団体へ依頼するとしたら、文書管理簿などに内容を記録して文書番号を記載し、しかるべき責任者名で正式に依頼しなければなりません
以上のことから、今回発出された文書は記録にも残らない「事務連絡」レベルの軽い内容なので、「依頼」とは書いていますが何の重みもないチラシのようなクソ文書です
もし私が勤めていた役所でこんな文書案を上司に見せたら、まちがいなく怒鳴られると思います
理由② 誰が依頼しているのかがわからない
発出者名に「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室」と「国税庁酒税課」と書いてあるのでパッと見では違和感を感じないかもしれませんが、実は「その部署の誰が言っているのか」ということがわかりません
「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室」「国税庁酒税課」というのは部署の名称です
「部署の名称」が言葉をしゃべったりすることはありません
内部あての軽易な事務連絡では省力化のためにこのような書き方をすることがありますが、対外的な文書では絶対にNGです
正式な依頼文では必ず「国の誰から」というのを書かなければ、いったい誰からの依頼なのかがまったくわかりません
今回のケースに当てはめると「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長 ○○ ○○」「国税庁酒税課長 ○○ ○○」から「酒類業中央団体連絡協議会各組合長」という記載をしなければ依頼文として成立しません
限りなくブラックに近いグレーな文書なので、責任の所在をうやむやにしようというのが見え見えです
こんなクソ文書が依頼文として成立するなら、誰でも国を装って文書を送りつけることができます
ちなみに重みがある文書というのは、このような文書のことです

これは国から都道府県に対する通知文ですが、このように「文書番号」がしっかりと記載されており、発出者が誰かというのが明確にわかる文書が正式な文書です
理由③ 発出者に何の権限もない
「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室」や「国税庁酒税課」には、今回の「依頼」に従わなかった業者に対する行政指導などの権限はありません
発出者名に「国税庁」の名前があるのが不気味ですが、これは「酒類販売業免許」などを国税庁が所管しているからということで、新型コロナ対策室に頼まれて連名にしたものと思われます
ツイートを引用させていただいたタナカヨースケさんも仰っていますが、国税庁はどちらかというと新型コロナ対策室に巻き込まれた立場だと思います
誤解のないように言っておきますと、国税庁はいつも我々酒類業の発展のために様々な手を考え尽くしてくれています。
今回は伝言ゲームに参加させられただけだと信じています。
国税庁は悪くない。 https://t.co/m2MqlROFhk— タナカヨースケ 今代司酒造 代表取締役社長 (@sakeman_tanaka) July 9, 2021
また、「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室」にも今回の依頼に応じなかった業者に対する行政指導などの権限はないので、従わなかったとしても何もできません
もし何かをすれば訴訟沙汰になりかねないことは両者とも十分にわかっているはずです
以上の3つの理由から、今回送付された文書に従う必要はまったくなく、破り捨ててもまったく問題のない文書です
おわりに
関係者の皆さまにおかれてましは、国から今回のクソ文書を送りつけられて非常に困惑されたり怒りが湧いてきたと思います
国から言われたことに逆らうのはとても勇気がいることだと思いますが、今回の一件は誰が見てもやり過ぎです
正式な文書で依頼したら訴訟で負ける可能性が高いことを考え、軽易な内容という扱いで確信犯的に「事務連絡」にしてきたので、こちらもそれ相応の対応でビリビリに破り捨ててあげてOKです
ぜひ、お酒を提供しているお店に対して取引停止という残酷なことだけは避けていただければと思います
それではまた