以前のブログで国や地方公共団体の「補正予算」について解説しましたが、ニュースなどで
というのを聞いたことがないですか?
これだけを聞くと
と思われたのではないでしょうか
ということで今回は、政府が補正予算を発表するときに使う
事業規模
財政支出
歳出総額
の3つの違いについて解説していきます
※ 補正予算の仕組みなどについては、こちらの記事をご覧ください。

目次
「事業規模」とは
「事業規模」とは
〇 補正予算の「総額」のことではなく
① 国が出すお金
② 国が国民に貸すお金
③ 税金や社会保険料などの支払いを猶予する分
④ 民間企業が使うだろうと予想する分
などを合わせた金額のことです
〇 ①は決まっている金額ですが、②~④は国民の動きしだいで金額が変わるので、国が勝手に予想した額にしています
〇 結局は「全部が予想どおりになったら、これくらいの経済効果があるかもねー」という金額なので、アテにできる金額ではありません
たとえば、2020年5月27日に内閣で決めた「2020年度の第2次補正予算」についてのニュースでは
政府は27日、持ち回りの閣議で、感染拡大を受けた追加の対策を実行するための第2次補正予算案を決定しました。
第2次補正予算案の追加の歳出は「一般会計の総額」で31兆9114億円に上り、補正予算として過去最大の規模となります。
財政投融資や金融機関の融資などを合わせた「事業規模」は117兆1000億円程度となります。
第2次補正予算案などに盛り込まれた追加の対策は、事業規模が117兆1000億円程度、財政支出が72兆7000億円程度となります。
【出典:2020/5/27 NHKニュースから抜粋】
という内容で発表されており、事業規模は「約117兆円」とされています
この「事業規模」というのは
① 国が出すお金
② 国が国民に貸すお金
③ 税金や社会保険料などの支払いを猶予する分
④ 民間企業が使うだろうと予想する分
を合計した金額となっています
「2020年度第2次補正予算の事業規模の内訳」
① 国が国民に出すお金:約35兆円
国が国民のために使うお金なので、国民はもらうだけです
② 国が国民に貸すお金:約13兆円
一時的には国民に渡りますが、あとで国に返す必要があります
③ 税金や国保などの支払いを猶予する分:約26兆円
あくまで「猶予」なので、後で国に払わなくてはなりません
④ 民間企業が支出するだろうと予想する分:約43兆円
民間企業が何らかの形で支出する分なので、国民の中でお金をまわしているだけです
このような内訳なので、国が国民に「117兆円」を使ってくれるというわけではなく、半分近くは民間企業がお金を使うのをアテにしたものなのです
安倍首相は、この「事業規模」を掲げながら


と自画自賛していますが、実際に政府が出すお金は「総額の1/3以下」なので、これを見て「すごい!」とは思わないでください
「財政支出」とは?
「財政支出」とは「事業規模」の内訳の1つで
① 国が出すお金
② 政府系金融機関などを通じて国民に貸すお金
を合計した金額です
「財政支出」とは、先ほど出てきた「事業規模」の内訳の1つで
「国が国民に出すお金」に「国が国民に貸すお金」を合わせた金額です
「2020年度第2次補正予算」では約73兆円が計上されましたが、そのうち「国が出すお金」は約32兆円です
よって、「財政支出」には後で国に返さなければならない分も含まれていますので、この金額も経済対策としてはあまり参考にならない金額です
「歳出総額」とは?
〇 いわゆる「真水(まみず)」と呼ばれているお金のことです
〇「国が出すお金」なので、この分は確実に経済効果が生まれます
テレビで経済評論家などが「真水(まみず)」と呼んでいるものです
これこそが国から国民へ純粋に出すお金なので、この分は確実に経済生産を上げる効果があります
たとえば「10万円の給付金(特別定額給付金)」は、このお金が使われています
ちなみにこれを「真水」というならば、事業規模は「塩水?」みたいな感じに思うのですが、そうは言わないそうです
「2020年度第2次補正予算」では約32兆円が計上されています
とてつもない金額なのですが、事業規模の「117兆円」を聞いた後では大したことないように聞こえますよね
おわりに
アベ首相の自慢の裏側には、こんなからくりがありました
補正予算のことを発表するならば「歳出総額」のことを中心に説明しなければならないはずなのですが、自慢するために「民間で使うお金」も含めて盛っているのです
ちなみに、こんな紛らわしい方法で国民に発表しているのは日本だけのようで、アメリカではもちろん「真水」の金額で国民に発表しています
国民は知らないだろうと思ってバカにしすぎですよね・・・
それではまた