私が2年前まで働いていた北海道庁で、大事件が発覚しました

道が発注した農業土木工事の一般競争入札で参加業者に予定価格を漏らしたとして、警察は、46歳の道職員を官製談合防止法違反の疑いで逮捕しました
逮捕されたのは、道の職員で主査の佐藤清志>容疑者(46)です。
警察の調べによりますと、佐藤主査は胆振総合振興局に勤務していた平成28年4月、道が発注した農業土木工事の一般競争入札で参加業者に予定価格を漏らし、この業者を含めた共同企業体に落札させたとして官製談合防止法違反の疑いが持たれています。
警察は認否を明らかにしていませんが、佐藤主査が以前勤務していた室蘭市にある胆振総合振興局が入る建物には29日午後8時すぎ、警察の捜査員20人近くが捜索に入りました。
捜索はおよそ2時間後に終わり、捜査員らは押収資料が入ったとみられる段ボール箱を次々と運び出して車に積み込んでいました。
入札があったのは厚真町内の農業関連工事で、共同企業体が予定価格の96.9%にあたる2億1600万円で落札していました。
当時、佐藤主査は胆振地方の農業土木工事で現場監督を務めていたということで、警察は、入札情報を漏らしたいきさつのほか、業者から金品を受け取るなどの癒着関係がなかったかについても調べることにしています。
【出典:2020年9月29日 NHK NEWS WEB】
3日前の9月26日にも十勝総合振興局の職員が特殊詐欺の「出し子」で逮捕されたばかりですが…

不正に入手した他人のキャッシュカードで口座から現金を引き出したとして十勝総合振興局に勤務する道職員が盗みの疑いで逮捕されました。詐欺グループの中で現金を引き出す役の「出し子」とみられ警察がグループの実態解明を進めています。
逮捕されたのは十勝総合振興局に勤務する道職員の石井翼容疑者(21)で、警察の調べによりますと、先月、不正に入手した他人のキャッシュカードで口座から現金150万円を引き出したとして盗みの疑いが持たれています。
カードの持ち主は苫小牧市に住む高齢の男性で、先月、市役所の職員などを名乗る男から詐欺の電話を受けてカード3枚をだまし取られていました。
石井容疑者は詐欺グループの「出し子」とみられ、調べに対し容疑を認めているということで警察はグループの実態解明を進めています。
職員の逮捕について、十勝総合振興局の水戸部裕局長は「道民の信頼を損ね、深くおわび申し上げる。事実関係を把握し厳正に対処する」とコメントしています。
【出典:2020年9月26日 NHK NEWS WEB】
北海道庁の職員は約64,000人(H31.4月時点 警察官なども含む)もいるので、中にはこんなゴミくずのような職員が存在してしまうのですが、それにしても悪質な事件が後を絶たないですね…
今回は十勝総合振興局の事件はちょっと置いておき
という素朴なギモンを解説していきます
目次
そもそも(官製)談合ってなに?
受注する企業や金額をあらかじめ決めてしまう」ことです
「入札に参加する企業同士が相談し、
・談合をしてしまうと、入札の最大のメリットである「価格や品質の競争」が起きないので「独占禁止法」という法律でも禁止されています
役所の担当者(公務員)が企業へ談合を指示したり、入札前に絶対に公表してはいけない工事の「予定価格」を漏らして不公平な形の入札にすることです
ここで「予定価格」というあまり聞き慣れない言葉が出てきましたので簡単に解説します
予定価格ってなに?
「見積金額」のようなもの
役所が工事などを発注する際に決める
一般的な競争入札の場合は「予定価格」が上限のボーダーラインとなり、その範囲内で一番安く入札した参加者が「落札」となります
→ 役所側はできるだけ経費を抑えたいと考えているので、ちゃんと仕事してくれて1番安く請け負ってくれる企業にお願いしたいから
発注する部署のトップです
「予定価格」を決めるのは→ 「予定価格調書」という書類に直筆で金額を書き、入札当日まで金庫で保管します
「設計書」というのを作成しながら計算します
今回のような土木工事の場合は、担当者が分厚い・計算が終わったら、上司へ確認してOKをもらいます(「決裁」といいます)
※ 私が現役時代に入札を担当していた時の話なので、役所によっては方法が少し違うかもしれません
「予定価格調書」自体は金庫で厳重に保管されているのですが、金額の基になっている「設計書」などのデータは担当者が持っているので、今回のように予定価格の漏えいが起きてしまうというワケです
官製談合ってなに? の続き
寄り道しちゃいましたので話を戻します
官製談合のパターンはいろいろありますが、わかりやすいパターンとしては

こういった感じで役所から入札の申し込みがあった企業へ働きかけて、役所側の意図どおりに入札させるというパターンです
一見すると落札できなかった△△工業や□□組には何のメリットもないように見えますが、ちゃんと次回以降の入札で落札できるように役所が同じような働きかけをします
要するに、「入札の形にするけど実際は発注先をローテーションで決める」というイメージです
もし、役所からの働きかけに逆らってしまうと、以後の工事で仲間外れにされて落札できなくなったりしてしまうので、企業としては簡単に逆らうことはできないです
北海道庁は1999年にこのパターンで大規模な官製談合をしていたのが発覚して、それがきっかけで「官製談合防止法」という法律ができたといわれています
ズブズブな癒着関係だったんですね
そして今回の官製談合のパターンはまだ全容が報道されていないですが、今のところ判明している限りでは

このように、発注元の北海道庁の職員(佐藤容疑者)が入札の申し込みがあった企業へ予定価格の情報を漏えいし、その見返りとして企業側から接待を受けたり金券などを受け取っていたようです
佐藤容疑者が要求したのか、企業から一方的に見返りとして渡したのかはわかりませんが、少なくとも私たちの貴重な税金を利用して私腹を肥やしていたのは確かなようです
落札額は2億1600万円で、落札率は96.89%(予定価格:2億2294万円)でした
やろうと思えば落札率を100%にできたと思うんですが、さすがに怪しまれるので調整したんでしょうね
佐藤容疑者はどうなるの?
このような大罪を犯したと疑われている佐藤容疑者ですが、もちろん北海道庁から懲戒処分が下されることになり、おそらく「懲戒免職」となりそうです
北海道庁では「北海道職員に係る懲戒処分の指針」というものを決めています
【北海道職員に係る懲戒処分の指針(抜粋)】

このように「免職」または「停職」にすると決められています
佐藤容疑者は2018年8月~2019年11月にかけて「労働組合名義の預金約70万円を着服した」として、2020年3月に「定職6か月」の懲戒職分を受けている前科があります
ということで、普通に考えれば懲戒免職は避けられないと思います
また、当時の佐藤容疑者の上司も「管理監督責任」を問われて処分されるでしょう(だいたいは「戒告処分」や「訓告処分」ですが)
※ 2020年12月に旭川地方裁判所で懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けたことにより懲戒免職とされました

おわりに
今回は、私がかつて働いていた北海道庁で発覚した官製談合事件に関する話でしたが、警察に家宅捜索されるのを見るのはとても複雑な気持ちでした
佐藤容疑者にとって1番致命的なのは、「お金がらみの社会的信用を完全に失った」ことだと思います
お金がからんでいない、まだ更正の余地があるような犯罪だったとしたら社会的信用を取り戻すチャンスもあったと思いますが、このような重大な悪事を立て続けに犯してしまった人を雇う企業なんてどこにもないと思いますよ
個人で起業するにしても信用がなければ商売にならないし、この先はもう地獄でしょう
私が好きな言葉の1つに「因果応報」というものがあります
とても有名な言葉だと思うのですが、簡単に言うと
「自分が受ける結果のすべては自分が作っている」
という仏教の教えの1つです
佐藤容疑者も典型的な「因果応報」でした
ちなみに「因果応報」というのは悪い意味だけではないです
「普段からよい行いをしていれば、それが巡り巡って自分に返ってくる」
という意味でもあります
これは以前にご紹介した「原因自分論」という考え方にも繋がってくる話なので、もし興味があったらこちらもご覧ください
https://sobogiroom.com/causemyself
最後に、北海道庁の職員の99%以上は毎日まじめに一生懸命に仕事しています
私もそうでしたが、毎日深夜まで残業したり土日もお盆もお正月も返上して仕事している職員がたくさんいます
まぁ、人柄や性格的にクセの強い職員はたくさんいましたが、今回のような悪事を働くゴミくずみたいな職員はほんの一握りもいません
と言いつつ、今回のような事件のほかにも飲酒運転や窃盗などの事件が後を絶たないのも事実なので、今後は起きることのないように鈴木知事には頑張ってほしいと思います
それではまた!