今回は総務省の接待問題について書いていきます
総務省の幹部らが衛星放送関連会社に勤める菅総理大臣の長男らから接待を受けていた問題で、武田総務大臣は谷脇総務審議官ら7人の減給など9人を懲戒処分に、残る2人を訓告などの処分にしました。
また、武田大臣みずからも大臣給与3か月分を自主返納することになりました。
一方、総務審議官当時に接待を受けていた山田真貴子内閣広報官は給与月額の10分の6を自主返納することになりました。
総務省の谷脇総務審議官ら職員が衛星放送関連会社「東北新社」に勤める菅総理大臣の長男らから、国家公務員の倫理規程に違反する接待を受けていた問題で、総務省は24日夕方、11人の処分を発表しました。
それによりますと、局長級以上の5人と課長級の2人の合わせて7人が「減給」の懲戒処分となりました。
具体的には
- 谷脇 総務審議官が減給10分の2・3か月
- 吉田 総務審議官が10分の2・3か月
- 内閣官房の奈良 内閣審議官が10分の1・1か月
- 秋本 前情報流通行政局長が10分の1・3か月
- 湯本 前審議官が10分の1・1か月
- 井幡 放送政策課長が10分の1・1か月
- 吉田 衛星・地域放送課長が10分の1・1か月
となっています。
また、課長級2人が「戒告」の懲戒処分に、課長級の1人が訓告、出向中の課長補佐級の1人が訓告相当の処分となりました。
さらに、武田大臣みずからも大臣給与3か月分を自主返納することになったほか、黒田事務次官も厳重注意を受けました。
一方、総務審議官当時に接待を受けていた山田真貴子内閣広報官は給与月額の10分の6を自主返納することになりました。
【出典:2021年2月24日 NHK NEWS WEB】
またしても公務員の闇が明るみに出てしまいましたね
しかも相手の中に菅総理の長男も含まれていたという・・・
【出典:2021年2月22日付け 日本経済新聞】
これは総務省が国会に提出した調査結果ですが、接待金額の合計は約58万円、のべ39件のうち21件に菅首相の長男が出席していたそうです
「総務審議官」という役職は、事務方トップの「総務事務次官」に次ぐナンバー2の役職で、全部で3人います
個人的には、トップの総務事務次官が1度も関与していないというのはどう考えてもおかしく、トカゲのしっぽ切りのような感じがしましたが、少なくとも総務省と東北新社はズブズブの関係だったようです
すでに関係者の処分内容も発表されましたが、今回はあらためて「国家公務員が民間企業から接待を受けたらどうなるのか?」
というギモンを解説していきたいと思います
目次
国家公務員が接待を受けたらどうなるの?
あなたが何となくイメージされているとおり、国家公務員は利害関係のある事業者から接待などを受けることを「国家公務員倫理規程」というルールで禁止しています


【出典:国家公務員倫理審査会】
このように接待はもちろん、金品を贈与したり一緒に麻雀やゴルフをすることも禁止されています
麻雀といえば、2020年5月に発覚した「黒川元検事長の賭け麻雀問題」もありましたね


もし国家公務員がこれを犯してしまった場合、たとえ総務省のナンバー1でもナンバー2でも容赦なく処分されます
誰が処分するの?
最終的に処分を決めるのは関係する省庁(今回の場合は総務省)ですが、流れが少し複雑です

【出典:国家公務員倫理審査会】
この図でもわかりにくいと思いますが、簡単に解説すると
【総務省】
① 違反内容を調査
② 調査結果&懲戒処分の案を作成
③ 人事院へ調査結果の報告&懲戒処分の承認を申請
【人事院(国家公務員倫理審査会)】
④ 総務省からの報告内容を確認し、懲戒処分を承認
【総務省】
⑤ 懲戒処分、処分の公表
このように、総務省で調べた結果と処分内容の案を「人事院」という第三者機関へ報告し、そこで懲戒処分を承認してもらいます
いちおう「人事院」という第三者機関を通すことにより、身内に甘い処分をしないようにするという狙いもあります
どんな処分を受けるの?
懲戒処分の種類には様々あり、違反行為の内容によって基準が決められています

今回の違反は10番(赤く囲った部分)が該当になると思われ、処分内容は
「減給または戒告」とされています
【戒告処分】
公務員に非違行為(非法行為や違法行為)があった場合に、口頭または文書で警告される処分
人事記録に残るため、人事異動や評価に影響が出る場合が多い
【減給処分】
給料の支給額を一定期間減らす処分
減給割合や期間は非違行為の内容によって個別に決められるが、「1年以下の期間」「月額の5分の1以下」という上限がある
上記の表に書いてあるのはあくまで「基準」なので、行為の内容によっては基準よりも重い処分や軽い処分もあったりします
では、あらためて今回の処分内容を見てみましょう
処分内容 | 減給額(推定) | 基準との比較 | |
---|---|---|---|
黒田 事務次官 | 厳重注意 | – | 当事者ではないが管理監督責任 |
谷脇 総務審議官 | 減給 10分の2 × 3ヵ月 | 約66万円 | 基準通り |
吉田 総務審議官 | 減給 10分の2 × 3ヵ月 | 約66万円 | |
奈良 内閣審議官 | 減給 10分の1 × 1ヵ月 | 約11万円 | |
秋本 前情報流通行政局長 | 減給 10分の1 × 3ヵ月 | 約29万円 | |
湯本 前審議官 | 減給 10分の1 × 1ヵ月 | 約11万円 | |
井幡 放送政策課長 | 減給 10分の1 × 1ヵ月 | 約7.5万円 | |
吉田 衛星・地域放送課長 | 減給 10分の1 × 1ヵ月 | 約7.5万円 | |
課長級2人 | 戒告 | – | |
課長級1人 | 訓告 | – | 基準より軽い |
課長補佐級 | 訓告 | – |
自主対応の内容 | 返納額(推定) | |
武田総務大臣 | 給与3ヵ月分を自主返納 | 約440万円 |
山田 内閣広報官 | 給与月額10分の6を自主返納 | 約70万円 |
※ 減給額・返納額は「国家公務員の給与(令和2年版)」を基に算出した推定額
※ 秋本、湯本氏については現在の給与額が不明だったため、在職当時の給料表から算出
ご覧のように課長級1人と課長補佐級以外については、基準通りの処分が下されたようです
減給内容に差があるのは、接待を受けた回数や金額が考慮されているからだと思いますが…
武田総務大臣は「給与3ヵ月分を自主返納」と報道されていたので、そのまま計算すると400万円以上の返納額となります
個人的には、当事者全員が武田大臣と同じくらいの減給を受けてもよいのではないかと思いました
見た目の減給額は大きいですが、もともとの給与額が一般庶民とはかけ離れた金額なので、この程度の減給では痛くもかゆくもないはずです
生活にダメージが出るような罰を受けてこそ、反省の意味もあると思うのですが…
ちなみに、山田 内閣広報官が「処分」ではなく「給与の自主返納」をしているのは、現在は総務省を退職して「特別職の国家公務員」の身分となっているため、「一般職の国家公務員」を対象とした処分のルール(国家公務員倫理規程)の範囲外だからです
そして、内閣広報官の服務規律は「内閣法」という法律で決まっていますが、懲戒などの罰則規定がないため、減給などの処分をすることができません
その代わり、不祥事を起こした場合は任命権者(今回の場合は菅首相)の責任のもと、解任や交代をさせることができます
いつでも解任される可能性はあるものの「特別職」という名前が付くだけあって、待遇は「一般職」の公務員より優遇されている感がありますね
おわりに
本記事を書いている時に
「山田内閣広報官の辞職を決定」
というニュース速報が流れていました
菅総理は続投させたかったようですが、山田氏は記者会見の仕切り役である以上、対マスコミを考えると続投は難しいという判断に至ったのでしょう
仮に続けていたとしても、国会やマスコミや世間からの激しい追及に精神が耐えられなかったと思います
今回のような公務員の接待問題を見て、ほとんどの方は
「国民全体への奉仕者が何やってんだ!」
「公務員が立場を利用して私利私欲を満たすとは何事だ!」
などなど、怒りに打ち震えていると思います
私も2年前まで北海道で地方公務員をしていましたが、いまだにこんな古くさいことをしているのかと驚きました
役所の文化(体質)というのは、そのほとんどが民間企業から20~30年ほど遅れているといわれています
どれだけ世間体を考えて立派なルールを作ったとしても、職員をリードする幹部職員の考え方が現代にアップデートできないので、こういった古くさい接待などが繰り返されます
証拠はないので私の推測ですが、おそらく許認可や補助金を所管しているほとんどの省庁で今回のような接待が現在も横行していると思います
残念ながら「許認可」や「補助金」のような「権力」を持ってしまった人間というのは、多くは神にでもなったかのように錯覚し、頭を下げてくる人からの接待も当たり前のように受ける考えとなってしまいます
権力というのは恐ろしいもので、その人の考え方や、果ては人格までも変えてしまいます
私が役所で働いていた時も、偉くなる前はとても人柄のよかった人が、偉くなって権力を持った瞬間に別人のように変わってしまったというパターンをたくさん見てきました
今回は国家公務員の話でしたが、「権力」というのは公務員に限った話ではありません
力を持った人間というのは自分が偉くなったと錯覚し、ときに相手に横柄な態度を取ってしまうことがあります
身近なところでは「店」と「客」の関係なんかも似ているのではないでしょうか
「客」には「店を選択できる」という力があります
だから「客」は「店」よりも偉いんだと錯覚し、下手に出てくる店に対して横柄な振る舞いをしてしまう、なんていうことはよくあるパターンだと思います
最後に話が脱線しましたが、今回のような不祥事を怒りに変換するだけではもったいないので、これを反面教師として
「自分は誰に対しても謙虚な気持ちで接していこう」
という心掛けを再認識していくことが大事なのかなと思います
それではまた